あのさ、この前ABマーク*の付いたサーモンを見かけたんだ。オーガニックのサーモンってどういう事だと思う?
*ABマーク・・・フランスのオーガニック食品認証マークのこと
海で採れる魚でオーガニックか…イマイチ分からないね。牛や豚なら、各農場で芝や餌を管理してオーガニックな環境を整えられるけど、海は各個人とはいかないからね。
さて、オーガニックサーモンとは一体どういう事なのでしょうか?
そこで今回は、オーガニックの海産物についてサーモン(鮭)に焦点を当てて解説していきます。
*サーモンと鮭は厳密に分類すると異なりますが、今回はサケ目サケ科に属している魚として一括りにしています。
私たちは天然のサーモン(鮭)を食べてない。
ではまず、オーガニックサーモンの説明に入る前に日本のサーモン(鮭)の現状を見てみましょう。
サーモン(鮭)は、朝ごはんやおにぎりの定番として日本でポピュラーなお魚ですね。私たちは海に囲まれて暮らしているので水産物は、ほぼ国内生産で賄っていると思われがちですが、実は約4割を輸入に頼っています。参考までに、2018年の水産物自給率(食用)は59%でした。サーモン(鮭)は、外国産のものが半数以上を占め、多くはチリやノルウェーから輸入しています。 そして、輸入のほとんどは養殖で育てられた魚です。
養殖の利点
養殖の良い点は、生産量の安定により価格変動が起こりにくいところです。近年、地球温暖化の影響で不漁が続いています。それと同時に、人口増加の一方で魚食の割合が増えたために乱獲が起きています。こうした悪循環により、今まで獲れていた天然物は減少、枯渇の危機に陥っている魚は全体の6割と言われています。これらの打開策として、養殖漁業は世界中で実施され年々増加の一途を辿っているのです。
サーモンを生で食べられるのは養殖のおかげです。加熱するか超低温でしか死滅しない寄生虫(アニサキスやサナダムシ)が存在しない餌を与えることで生食が可能になりました。そして驚くことに、これは約30年前とごく最近の話です。
持続可能な海の利用のためにも養殖漁業を支持していきたいところですが、無視できないいくつかの問題点もあります。
養殖に見られる問題点
主な問題は、漁業環境です。その原因となるのが餌と投与される薬品で、人体や環境に多大なる悪影響を及ぼす危険性があります。
1.餌の問題
養殖のサーモン(鮭)を1kg太らせるためには、約1.5kgの魚が必要と言われています。養殖魚に必要な餌にはそれ以外に、栄養を補う他の物質が使われていて、大手EWOS社(ノルウェーの鮭養殖用飼料メーカー、現Cargillグループ)の商品には、植物油、着色料、ミネラル、炭水化物、エトキシキン(抗酸化剤)*が含まれています。その他に、大豆やトウモロコシなどの穀物、豚肉や鶏肉が使われることもあります。このように、自然に反した栄養摂取をして育つので不自然な魚になるのです。
*エトキシキンは、輸送段階での品質保持のために使われますが、国際規則で自然発火を防ぐために魚粉に使用する事が定められている抗酸化剤です。日本では使用が許可されていません。
2.薬品の問題
広大な海に比べて、養殖漁場は小さなスペースなので糞や餌の食べ残しにより汚染が起こりやすい環境です。そのため、病気を防ぐ感染予防の目的で抗生物質などの医薬品が用いられます。魚に優しい(人畜、鳥にも)と言われる殺虫剤ジフルベンズロンも、河川に大量に流れる事で甲殻類の脱皮に影響を及ぼしてしまいます。
こうしたことから、魚の脂肪部分には残留性有機汚染物質が大いに蓄積されており、それらが私たちの体内に取り込まれると、ガン・記憶障害・ADHD・自閉症・免疫障害などを引き起こす可能性があるのです。実際に、2013年ノルウェー政府は「養殖サーモンなどの脂が多い魚は、若い女性や妊婦は週2回を超えて食べないほうがいい」との通達を出しています。また、汚染された水は、養殖業漁場だけに留まらず、海の水質をも悪化させます。その結果が生き物の大量死や成長不良、赤潮の異常発生になるのです。
養殖漁業は、現代社会で欠かせない一方で環境破壊につながりやすい危険な一面を持ち合わせているのですね。こうした問題を起こさないために、環境や安心安全に配慮して管理生産されているのがオーガニックサーモンです。
オーガニックサーモンとは?
定義
オーガニックサーモンはオーガニック認証機関に認定された有機養殖サーモンの事です。オーガニック(有機栽培で作られた)の餌と徹底的に管理された水質環境で育てられます。
有機養殖の餌について
動物食の生き物
- 食品は、有機水耕栽培もしくは有機養殖で作られたものを使用すること
- 魚粉や魚油は、有機水耕栽培養殖で作られる商品の残りを使用すること
- 魚粉や魚油は、サステナブルシーフードで獲られた商品の残りを使用すること
- 原材料は有機栽培のものを使用すること(植物や家畜類)
- 持続可能な漁業と認証されている漁場で獲れた魚を使った食品であること
- ミネラルは、「annexe V」のリストの中にあるものを使用すること
- 食品添加物、補強剤は、「annexe VI」のリストの中にあるものを使用すること
- 植物由来の商品は全体の60%までを使用限度とすること
その他 (コイ、ヨーロピアンパーチ、熱帯魚など)
コイ科、ヨーロピアンパーチ、ノーザンパイク、バス、ホワイトフィッシュ、バルチックチョウザメ、熱帯魚について
- 池の中の食料を餌としても良く、もしこれらの原料が揃わなければ、有機栽培で作られた植物もしくは海草の使用も可能である
【サケ・マスについて】
アスタキサンチンは、有機または天然由来である事を条件に使用を認められる
ヒスチジンは、栄養補助食料または白内障予防のために発酵を元にしたものの使用が認められる
【メコンオオナマズ】
サステナブルシーフード由来の魚粉または魚油は、全体の10%までとして使用が認められる
禁止事項
- ホルモン剤
- 閉ループリサイクル(ビール瓶のように洗って何度も使うリサイクル)
- 水の加温・冷却機器の使用 → 井戸水を加熱冷却することが可能性としてあげられる
- 片一方の性別だけの生産(手作業選別した場合を除く)
- クローン
- 人工交雑種
- 人工的な倍数性の操作
様々な限度
- 【照明】1日16時間までを限度とし、急な光度の移り変わりを制御する
- 【酸素の供給】温度上昇、圧力降下、有害物質が発生した場合に備えたストック管理(入れ替え、サンプリング)
- 【生き物の取り扱い】生き物の健康を考慮するため、最小限に制限すること
- 【殺傷の仕方】魚にとって苦痛のかからない方法を取ること
病気予防、掃除、消毒について
予防接種、麻酔、ホメオパシー、強制的な摘出根絶などは治療として帳簿に記入はしないこと
待機時間は通常の2倍を目安とし、時間の規定が無い場合は最短48時間とすること
【アロパシー医療】が認められるのは、生産までに
- 1年以下のサイクルを持つ生物・・・生涯で1度のみ
- 1年以上のサイクルを持つ生物・・・12ヶ月に2回まで
【寄生虫に対する駆除、治療】が認められるのは、生産までに
- 18ヶ月未満のサイクルを持つ生物・・・12ヶ月に1度のみ
- 18ヶ月以上のサイクルを持つ生物・・・12ヶ月に2度まで
*掃除や消毒に使うことができる商品は、「annexe VII-2」リストの規定889/2008」から、全ての商品に獣医証明書が必須
販売商品をオーガニックとして市場に出す前に、養殖業で使用する全ての商品をエコサートに申請することが必要
参考:ECOCERT Production de poissons en agriculture biologique
この他にも、魚の密度や水槽の状態、初期の魚の状態などの規定があります。
今回提示したものはEU圏内の基準です。日本では現在、国が定める有機の水産基準は存在しませんが、特定非営利活動法人JONAさんで独自認証基準をもとにした有機認証を設けています。
オーガニックサーモンを観察
実際にオーガニックサーモンを購入してみました。アイルランド産のスモークサーモンです。アイルランドは質の高い水産物生産国の一つで、環境保全にも積極的に取り組んでいます。
アイルランドはまた、世界初のオーガニック認証を得たアトランティックサーモンの主要サプライヤーであり、国全体でオーガニックムール貝の持続的な養殖に成功した世界で唯一の産地です。
Irish Food & Drink
外観
中身
原材料
アトランティックサーモン、塩
食べた感想
早速、パンケーキの上に具材をのせてカナッペで食べてみました。
カナッペの中身
上から時計回りに、黒オリーブ&サーモン、モッツァレラ&サーモン、フォアグラ&モッツァレラ&黒オリーブ、バター&サーモン、フォアグラ&エシャロット
フォアグラは、同居人フィリップ氏のお土産です。
実食
臭みが少なく、適度な脂分でした。魚の味が脂に埋れすぎない程度にしっかりしていたからか1枚で満足しました。
まとめ
今回オーガニックサーモンを調べてみて、改めて環境保全の大切さを感じました。食のために生態系を壊してしまったのは他でもなく私たち人間です。だから、オーガニックの食品を支持するという事は環境への償いないしは、必要なことなのだと考えます。出ないと、このまま安価な物が出回りすぎて、いつの日かサーモンが高級魚として食べられなくなる可能性もあるでしょう。そうならないためにも3回に1回は、オーガニック商品を選ぶなど、ちょっとずつオーガニック商品を取り入れる心がけが大切ですね。
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